遭遇

蕪もどきが居た。
いや、正しくは蕪もどきと呼ばれる精霊に出会った。
紅茶の木を育てるために、以前使われていたとされる茶葉畑を見に行ったときのこと。白くて丸い、間抜け顔のついた蕪のような生き物が居たのだ。彼らの頭からは双葉が生えている。
「んのぉー。はろーハピネス」
「は、はろー……?」
これが茶葉か、と花の魔王人形に尋ねると思いきり否定された。
「そりゃまあ茶葉畑ですからね、ふつう、茶葉が生えます!」
ならやはり、あの生き物が茶葉なのではないか。そう告げるともう一度強く否定される。
「茶葉以外が生えないとは言ってません!! あれは生物ではなく、土の精霊の類ですよ。とりあえず蕪もどきと呼んでいます」
というわけだ。
「詳しいことは私にもさっぱり。出たり消えたり神出鬼没、いつのまにか増えたり減ったり、時折サイズが変化して食用可というところまではわかるんですけどねー」
食べられるらしい。よくわからないけど無害そうだ。ためしに屈んで人差し指でつついてみると、意外とやわらかい。
「あふんあふん。今日のわしはマシュマロボディ。明日は桃くらいを目指す」
毎日触感が変わるのだろうか。蕪もどきをつついている内にウサギがやってきた。
「城主殿ー、茶葉その他植物を育てる畑として機能させるには土を耕して環境を整えなくてはなりません。農耕のご計画を……」
ウサギの話を聞いている横で蕪もどきの双葉がピンと立つ。
「お? お? お茶作り再開? じゃあわしも頑張るぞい」
蕪もどきは突然土に潜ると、その数を増してまた地上へ現れた。そして茶葉畑を縦横無尽に動き回る。ボクはそれをウサギと一緒に呆気に取られながら見ていた。
暫くしてから、ウサギが何かに気づいて畑の土を前足で掘る。
「これは……土に栄養が与えられている? リソースはこの城の魔力でしょうか……」
ウサギは驚いたように呟いた。どうやら乾いていた土が肥沃な土へと変化しているらしい。
花の魔王も、彼らに茶葉畑を豊かにする手伝いをして貰っていたのだろうか。彼らは土を肥やす天才なのかもしれない。
ともあれ、これでボクが茶葉を自分で作る準備が整った。初めてだから、買った茶葉より美味しくお茶を淹れられないかもしれないけれど、ここの元城主と同じ経験ができる。
自分で育てた薔薇と茶葉でローズティーが作れたら、花の魔王にも報告してみよう。
僕は畑で動き回る蕪もどきを見ながら、それを少し楽しみに思った。