陽桜市を丸ごと覆う巨大異界の出現は、日常と退魔師の常識に大きな衝撃を与えた。
それは霊山珠緒にも同様であった。
珠緒は退魔師だ。特定の組織には所属せず、時々怪異や異界の討伐を行っている。ただ、それは本業とは言い難かった。
珠緒は普段、叔父と蝋燭店を営みながら呪具を作って暮らしている。それが日常で、怪異や異界に直接対峙する案件は他の退魔師に任せていることが殆どだった。
と言うのも、珠緒には度胸が足りなかった。
「無理無理無理無理ごめんなさい!!!!」
「なんで謝ってるんですか貴方!?」
珠緒と、知り合ったばかりの女子高生の背後から迫っているのはマグロだった。
珠緒達が居る場所はずっと前に廃業したホテルだった。陸地であり屋内の廊下にマグロが居ること自体おかしいのだが、更におかしいのはマグロに手足が生えて、廊下を素早く疾走している点である。
肝試し中に友人とはぐれたらしい少女は、彷徨う内にあのマグロと鉢合わせ、追われたのだと言う。そこに見知らぬ男が現れたと思ったら一緒になって半泣きで逃げているのが現状だった。
珠緒はあのマグロが怪異で、自分がそれを退治しに来た退魔師であると説明することはできたが、やめた。きっと説明したところで何も理解できないに違いなかった。
「無理!! マジで無理!! すんませんちょっと止まって伏せて!」
「え!?」
「ごめんちょっと失礼します!!」
少女は珠緒に無理やり転ばされる形で廊下に体を打ち付ける。
「痛っ……何するんですか!」
少女が文句をぶつけようとした途端、轟音と共に激しい光と熱が押し寄せる。
一通りの喧騒が静かになった頃には、煙と、真っ黒に焼け焦げた煤だけが残っていた。
「死ぬかと思った……死ぬかと思った……。このマグロステーキは不味そうだなあ……」
珠緒は、度胸が足りなかった。
けれど自分が手を伸ばせば救える存在を放っておけるほど、割り切りのいい人間でもなかった。
これは、そんな半端者の退魔師が巨大異界騒動に巻き込まれる話だ。
それは霊山珠緒にも同様であった。
珠緒は退魔師だ。特定の組織には所属せず、時々怪異や異界の討伐を行っている。ただ、それは本業とは言い難かった。
珠緒は普段、叔父と蝋燭店を営みながら呪具を作って暮らしている。それが日常で、怪異や異界に直接対峙する案件は他の退魔師に任せていることが殆どだった。
と言うのも、珠緒には度胸が足りなかった。
「無理無理無理無理ごめんなさい!!!!」
「なんで謝ってるんですか貴方!?」
珠緒と、知り合ったばかりの女子高生の背後から迫っているのはマグロだった。
珠緒達が居る場所はずっと前に廃業したホテルだった。陸地であり屋内の廊下にマグロが居ること自体おかしいのだが、更におかしいのはマグロに手足が生えて、廊下を素早く疾走している点である。
肝試し中に友人とはぐれたらしい少女は、彷徨う内にあのマグロと鉢合わせ、追われたのだと言う。そこに見知らぬ男が現れたと思ったら一緒になって半泣きで逃げているのが現状だった。
珠緒はあのマグロが怪異で、自分がそれを退治しに来た退魔師であると説明することはできたが、やめた。きっと説明したところで何も理解できないに違いなかった。
「無理!! マジで無理!! すんませんちょっと止まって伏せて!」
「え!?」
「ごめんちょっと失礼します!!」
少女は珠緒に無理やり転ばされる形で廊下に体を打ち付ける。
「痛っ……何するんですか!」
少女が文句をぶつけようとした途端、轟音と共に激しい光と熱が押し寄せる。
一通りの喧騒が静かになった頃には、煙と、真っ黒に焼け焦げた煤だけが残っていた。
「死ぬかと思った……死ぬかと思った……。このマグロステーキは不味そうだなあ……」
珠緒は、度胸が足りなかった。
けれど自分が手を伸ばせば救える存在を放っておけるほど、割り切りのいい人間でもなかった。
これは、そんな半端者の退魔師が巨大異界騒動に巻き込まれる話だ。